私たちは明日にも無差別殺傷事件に巻き込まれるかもしれません!
というのは、最近、何の罪もない人たちが巻き込まれる殺傷事件が何件も発生しているからです。
それらのうちの一つが「拡大自殺」と呼ばれるタイプで、5月28日に川崎市の路上で起きた包丁で次々と児童や大人を刺した事件です。
なぜこのような事件が起きるのでしょうか?
なくするためにはどうすればいいのでしょうか?
答えは一つではないと思いますが、一市民としてできることは何かを考えてみます。
繰り返される「拡大自殺」
無差別の殺傷事件は主に二種類で起きていて、一つは車の暴走によるもので、高齢者による運転ミスがよく話題になります。
もう一つは、「拡大自殺」と呼ばれるもので、自殺する際に関係のない他人を巻き込んで自分も自殺するタイプです。
「拡大自殺」については精神科医の片田珠美さんは著書の中で説明しています。
絶望感から自殺願望と復讐願望を抱き、誰かを道連れに無理心中を図ることを精神医学では「拡大自殺」と呼ぶ
出典 片田珠美著「拡大自殺」
古くは2001年に起きた「池田小事件」が記憶に残っています。
大阪教育大付属池田小学校の児童8人が死亡し、15人がけがを負いました。
その後2008年に起きた「秋葉原通り魔事件」では7人が死亡し、10人がけがを負いました。
そして、5月28日に川崎市の路上で起きた包丁による無差別殺傷事件です。
小学6年生の女子児童と39歳の外務省職員が亡くなり、小学生と大人17人が重軽傷を負いました。
刺した当人は包丁で首を切り、死亡しています。
アメリカでたびたび繰り返される銃乱射事件も「拡大自殺」と言っていいでしょう。
なぜ「拡大自殺」は起きるのか
法務省は「無差別殺傷事犯に関する研究」で動機などをあげています。
「無差別殺傷事件」の定義
、「分かりにくい動機に基づき、それまでに殺意を抱くような対立・敵対関係が全くなかった被害者に対して、殺意をもって危害を加えた事件」
法務省「無差別殺傷事犯に関する研究」より
報道によると、今回の犯人は51歳の無職の男性で、叔父叔母夫婦と同居しているものの、日頃はほとんど会話もない状態だったそうです。
自分の現状に嫌気がさし、将来に絶望して自暴自棄になり、どうせ死ぬなら他人も巻き込んで死のうと犯行に及んだのではと想像します。
「無差別殺傷事犯に関する研究」では犯人像がリストアップされています。
その中から今回の事件に関係ありそうな項目をまとめてみます。
・年齢が低い者は親と同居、それ以外は単身。
今回の犯人は叔父叔母夫婦と同居していましたが、コミュニケーションが希薄で、ほとんど単身同様の暮らしをしていました。
・犯行時に異性の交流相手がいない。
・犯行時に友人がいないし、交友関係が希薄、険悪。
・犯行時には無職や非正規雇用。
・犯行の少し前から決意した計画的犯行が多い。
包丁を2丁用意するなど計画的だったことをうかがわせます。
・女性、子供、高齢者などの弱者を対象として選ぶ。
これらから、社会的・経済的に恵まれない生活状況が精神面でも本人を追い詰め、今回のような事件の引き金になったのではと思われます。
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「拡大自殺」を防ぐには
何といっても犯行を起こした当人が悪いことに間違いないのですが、このような状況に追い込まれている人は今回の犯人だけでしょうか?
今回はたまたま表に出てきただけで、可能性のある人は結構いるのではと想像します。
まさに氷山の一角と考えられます。
そういう訳で、冒頭に「私たちは明日にも無差別殺傷事件に巻き込まれるかもしれません。」と書きました。
この「拡大自殺」を防ぐにはどうすればいいでしょう?
衣食住が足りて人間関係も仕事も順調なら、誰も好き好んでこのような事件を起こすようなことはしないでしょう。
そのためには社会が経済的のみならず精神的にも豊かになることが必要ですが、ことはそう簡単ではありません。
私たち一人ひとりができることをやっていくしかありません。
まずは自分自身が日々健康で人と楽しく交流するよう努めましょう。
家族や友人知人の中に悩みを抱えている人がいれば、相談に乗ってあげましょう。
人の悪口やうわさ話を避けて、お互いに苦しまないようにしましょう。
ものごとを多面的に見て、良い面を見つけ感謝しましょう。
少しでもいい行政が行われるよう、選挙に行って善い人を選ぶようにしましょう。
まだまだあると思いますが、これら日頃の小さな積み重ねによって、少しでも不幸な事件がなくなることを願うばかりです。